光造形方式の3Dプリンターは、液体レジンを紫外線で硬化させることで、繊細で美しい造形が可能な技術です。
一般的なFDM方式に比べて、表面が滑らかで、細部の再現性にも優れているため、ホビー用途から試作品の製作まで幅広く活用されています。
この記事では、光造形3Dプリンターの仕組みや特徴、メリット・デメリット、さらには家庭用としておすすめのモデルについて詳しく解説していきます。
初心者でも失敗せずに導入できるよう、選び方のポイントもあわせて紹介します。
3Dプリンター光造形とは?
光造形方式の3Dプリンターは、紫外線を当てることで硬化する専用の液体樹脂(レジン)を使用し、造形物を一層ずつ積み上げて形にしていくタイプのプリンターです。
3Dモデルは「スライサーソフト」と呼ばれる専用のアプリケーションによって、極めて細かい層に分割され、それに基づいてプリントが進行します。
レジン素材には、硬質プラスチックに近いものから柔軟性のあるゴムのようなものまで、質感の異なるバリエーションが豊富にそろっています。
そのため、光造形3Dプリンターは初心者でも扱いやすいだけでなく、用途に応じてさまざまな質感を再現できる特徴もあります。
光造形3Dプリンターは、ホビーから試作品の制作まで、幅広い場面で活躍します。
光造型3Dプリンターには『家庭用』と『業務用』がある!違いは?
家庭用と業務用の光造形方式3Dプリンターでは、『価格』と『造形精度』に大きな違いがあります。
まず、家庭用モデルは比較的安価で提供されており、多くの機種は10万円未満で購入可能です。
中には1万円台の製品も見られますが、その分、仕上がりの精密さに欠ける場合があるため、選ぶ際は注意が必要です。
これに対して、業務用の光造形3Dプリンターは、おおよそ10万円から50万円程度の価格帯で販売されています。
高価格だからといって必ずしも優れているとは限りませんが、細部まで丁寧に設計されているため、一般的に家庭用よりも高精度な造形が可能です。
光造型3Dプリンターの4つのメリット
ここでは、光造形方式の3Dプリンターが持つ主な利点を4つに分けて説明します。
メリット①量産に強い造形スピード
メリット②高精度な仕上がり
メリット③滑らかな質感表現
メリット④高い透明度の造形
それではここから、1つずつ詳しく解説します。
メリット①量産に強い造形スピード
光造形3Dプリンターは、使用するレジン(液体樹脂)の硬化時間が短く、造形の進行がスムーズであることから、短時間で複数の造形物を出力できる点で優れています。
特に「DLP方式」は、光を下方向から面全体に照射する仕組みを採用しており、一度に広い範囲を硬化できるため効率的に量産が可能です。
また「LCD方式」のプリンターもあり、こちらは液晶パネルを利用して同じように面状で硬化を行います。
初期費用を抑えやすいのが特徴ですが、液晶パネルの交換コストが定期的に発生する点は注意が必要です。
メリット②高精度な仕上がり
仕上がりの精度が高いことも大きな魅力です。
熱溶解積層方式(FDM)では、熱による変形で寸法精度や表面の美しさが損なわれることがありますが、光造形方式ではそのリスクが少なく、高解像度で造形できます。
特にフィギュアや試作品のように、グラフィックデータに近い緻密さを求める用途に適しています。
メリット③滑らかな質感表現
光造形で使うレジンは液体素材であるため、積層痕が目立ちにくく滑らかな表面を実現できます。
さらに、樹脂の種類を選ぶことでゴムのような柔らかさなど、用途に合わせた質感を再現することも可能です。
メリット④高い透明度の造形
ナチュラルカラーやアクリル系レジンを利用し、造形後に研磨やトップコートを施すことで透明感のある仕上がりが得られます。
この工程を工夫することで、ガラスに近い透明度を再現することもできます。
光造型3Dプリンターの3つのデメリット
光造形方式の3Dプリンターは高精細な造形が魅力的ですが、導入前にデメリットも把握しておくことが大切です。
以下では代表的な課題を紹介します。
デメリット①洗浄と二次硬化の手間
デメリット②サポート材の除去作業に時間がかかる
デメリット③太陽光に弱く脆い特性を持っている
それではここから、1つずつ詳しく解説します。
デメリット①洗浄と二次硬化の手間
レジンを用いた造形品は、プリント直後は未硬化の樹脂や余分なレジンが付着しています。
そのため、エタノールや水で洗浄し、さらに紫外線などによる二次硬化を行う必要があります。
水洗い可能なレジンも存在しますが、洗浄後の液体には樹脂成分が含まれるため、下水に直接流せません。
一方で、水溶性で扱いやすい『エキマテ』を利用すれば、台所用洗剤と水道水で洗浄が可能なため、処理後の廃液も多くの地域で下水道に流せます。
さらに、アレルゲンや有害物質を含まず、刺激臭も少ないため、学校やオフィスといった閉鎖空間でも快適に使用できます。
デメリット②サポート材の除去作業に時間がかかる
光造形プリンターでは、造形物の浮いている部分を支えるために『サポート材』を併用する必要があります。
スライサーソフト上で配置してから造形するため、完成後はこのサポート材を取り除く作業が発生します。
特に複雑な形状では除去に時間がかかる場合もあるため、時間配分には注意が必要です。
デメリット③太陽光に弱く脆い特性を持っている
光造形で作られた造形物は耐候性が低く、直射日光に長時間さらすと硬化が進み、割れや変形の原因になります。
透明レジンの場合、日光によって黄ばみが出てしまう点もデメリットとして挙げられます。
また、標準的なレジンで造形したものは脆く、欠けやすい特徴があります。
強度や靭性を重視するなら、ABSに近い特性を持つ『ABSライクレジン』の使用が推奨されます。
光造型3Dプリンターの4つの選び方
光造形方式の3Dプリンターは種類が豊富で、価格や性能の幅も大きいため、自分に合った1台を見つけるにはいくつかの要素を比較検討する必要があります。
選び方①サポート体制を確認する
選び方②使用できるレジン素材を把握する
選び方③メーカーや販売店に相談する
選び方④造形可能なサイズを確認する
そこでここでは、光造形方式の3Dプリンターを選ぶ際のポイントを解説します。
選び方①サポート体制を確認する
本体の性能だけでなく、購入後のフォロー体制も大切です。
故障や不具合が起きたとき、メーカーや販売店が迅速に対応してくれるかどうかで業務の継続性が変わります。
選び方②使用できるレジン素材を把握する
レジンは種類によって性質が大きく異なります。
硬度、透明度、耐久性などの特性が造形物の用途に直結するため、どのレジンに対応しているかを必ず確認しましょう。
求める仕上がりに合ったレジンを扱える機種を選ぶことで、導入時に失敗することがないため覚えておきましょう。
選び方③メーカーや販売店に相談する
カタログや公式サイトの説明だけではわかりにくい部分も多いため、直接問い合わせて疑問点を解消するのがおすすめです。
用途や予算を伝えることで、より適切な機種を提案してもらえる場合もあります。
選び方④造形可能なサイズを確認する
最後に重要なのが造形サイズです。
各機種には最大造形範囲があり、それを超える大きさのモデルは出力できません。
現在作りたい造形物の大きさに加え、将来的に必要になるサイズも考慮したうえでプリンターを選定することをおすすめします。
余裕のあるサイズを選んでおけば、後から用途が広がっても柔軟に対応できます。
初心者におすすめの家庭用光造型3Dプリンター2選
おすすめ①Foto8.9s

Foto8.9sは、FLASHFORGE製のLCD方式光造形3Dプリンターで、高精細な造形と扱いやすさが魅力のモデルです。
仕様項目 | 内容 |
---|---|
造形エリア(最大) | 幅:192mm / 奥行:120mm / 高さ:200mm |
本体サイズ | 横幅:305mm / 奥行き:264mm / 高さ:490mm |
プリント方式 | LCDを用いた光造形方式 |
レジントレイ容量 | 約0.5リットル |
搭載パネル | モノクロ4K LCDディスプレイ |
消費電力 | 最大出力120W |
光源仕様 | 波長405nmのLEDライト |
操作方法 | 3.5インチのタッチスクリーン式 |
接続インターフェース | Wi-Fi、USBメモリ、LANケーブル(Ethernet) |
価格(税込) | 96,800円 |
4Kモノクロパネルを採用し、ムラの少ないUV照射によって滑らかな仕上がりが得られます。
本製品は、最大192×120×200mmの造形領域を持ち、本体も設置しやすいサイズ感です。
積層ピッチは0.025~0.2mmで設定でき、造形スピードは10~50mm/時と実用性にも優れています。
水洗いレジンなどにも対応しており、後処理が簡単で、初心者にも扱いやすい構造です。
操作パネルはタッチ式、接続方法もWi-FiやUSBなど複数選択肢が用意されており、柔軟な運用が可能です。価格は税込96,800円で、コストパフォーマンスも良好です。
おすすめ②Foto8.9

Foto8.9sは、FLASHFORGEのLCD方式を採用した光造形3Dプリンターで、4Kのモノクロパネルによって高精度な出力が可能です。
紫外線の照射ムラが抑えられた設計のため、滑らかで美しい仕上がりが得られます。
項目 | 仕様内容 |
---|---|
造形可能サイズ | 横192mm × 奥行120mm × 高さ200mm |
本体寸法 | 幅280mm × 奥行240mm × 高さ465mm |
成形方式 | LCD方式の光造形 |
レジン容量 | 約500ml(0.5L) |
搭載パネル | モノクロ4K LCDディスプレイ |
電源容量 | 最大120ワット |
使用光源 | 波長405nmのLEDユニット |
操作パネル | 3.5インチのタッチスクリーン |
データ転送 | USBメモリによる接続 |
税込価格 | 78,100円 |
造形エリアは192×120×200mmと家庭用では比較的大きめで、多用途に活用できます。
積層ピッチは0.025mmから0.2mmまで対応し、繊細な造形から高速出力まで幅広く調整可能です。造形スピードは毎時10〜50mm程度で、精度と効率のバランスがとれています。
対応するレジンは、水で洗えるタイプやABS調のものなど複数あり、用途に合わせて選べます。
中でも水洗いレジンは、アルコール不要で後処理が簡単なため、作業負担や安全面でも利点があります。
本体操作はタッチパネルで直感的に行え、初心者でも扱いやすい設計です。日本語マニュアルと1年間の保証が付いている点も安心材料となっています。
価格は税込78,100円で、コスト面でも導入しやすい製品といえます。
まとめ
光造形方式の3Dプリンターは、紫外線で硬化するレジンを用いて、高精度かつ滑らかな造形を実現する先進的な技術です。
特に、フィギュアや透明パーツなど、細部の再現性が求められる用途に適しており、DLP方式やLCD方式などの種類があります。
メリットとしては、高速な出力、細やかなディテール再現、滑らかな質感、透明感のある造形などが挙げられます。
一方で、造形後の洗浄や二次硬化といった後処理の手間、サポート材の除去作業、そしてレジンの耐候性の低さなど、いくつかの注意点も存在します。
導入時には、サポート体制、使用可能なレジン、造形サイズなどを確認することが重要です。
中でもFLASHFORGEの「Foto8.9s」や「Foto8.9」は、初心者にも扱いやすく、高精細な出力が可能なモデルとして評価されています。
用途や予算に応じて最適な1台を選べば、光造形3Dプリンターはものづくりの可能性を大きく広げてくれる心強いツールとなるでしょう。
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